【留学】脱「ぬるま湯」へ―勇気をもって飛び込まないと

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 「帰ってきてから、日本が息苦しく感じてしまう」―イギリス・サウサンプトン大学での1年間の留学を振り返ってこう微笑むのは、大谷恵彩さん(仮名・経済学部4年)だ。「解放感があった」というイギリスでの生活を懐かしむ大谷さん。しかし、留学当初はイギリスでの生活になじめず、苦労したという。

インタビュー・文 仲井成志(教養学部4年)

 

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イギリスの曇天に綺麗な虹がかかる=サウサンプトン大学のキャンパスにて(大谷さん提供)

 

ぬるま湯から脱したい

 大谷さんが海外留学を意識し始めたのは、中学生時代まで遡る。学校の海外研修プログラムでアメリカ・サンフランシスコにある姉妹校を訪問した際、「コミュニケーションがうまくできず、悔しかったし、衝撃だった」と思い出を語る。アメリカ人の生徒とペアワークを通じて交流している時も、「相手が何とか私に通じるように努力してくれているのが分かって、申し訳なかった」という。その経験が「英語を話せないというコンプレックスになった」

 高校時代には英語ディベート部にも入ったという大谷さん。意識していた海外留学が現実味を帯びたのは、大学に入り駒場で生活していたときだった。2年間の学生生活を経て、「得たものが何もないのではないか」と感じてしまったという。「日本の大学生活はゆるくて、悪く言えばぬるま湯に浸かっているような感じ」

 ぬるま湯から脱したい。その一心で、大谷さんは「勢いで(留学に)応募して、行かざるを得ない状況をつくった」

 

環境を変えるだけでは 

 「渡航して早々、ホームシックになってしまった」と語る大谷さん。「生ぬるい生活」から脱しようと決意していたものの、英語でのコミュニケーションの難しさは想像以上だった。フラットメイト4人で食事したときには、「半分しか理解できず、会話についていけなかったし、日本の話を振られても思うように答えられなかった」といい、内気になってしまった。そんな初めの頃は「ただただ辛かった」という。

 それでも、1か月ほど生活するうちに、心境に変化が訪れた。「ただ留学するだけじゃ何にもならないと気づいた」と大谷さん。「環境を変えるだけでは何も変わらないし、時間が経てばいいというものでもない」。勇気を出して様々な活動に積極的に参加しなければ成長できない、と思い始めた。

 

英語を話す楽しさ 

 それ以来、大谷さんは自分から積極的に話しかけるようになったという。留学生の交流イベントに1人で顔を出した際にはオランダ人やドイツ人の女性に囲まれ、苦戦しながらもクイズ大会で盛り上がった。さらには友人から紹介してもらったという剣道サークルにも参加するようになった。剣道経験者でもある大谷さん。初心者の学生に英語で基礎を教えることもあった。

 授業のオリエンテーションで出会ったというポーランド人の女性とは特に親密になり、彼女と深く付き合ううちに「コミュニケーションがとれる楽しさを実感するようになった」

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イースター休暇中、ポーランドの友人を訪ねてワルシャワへ=世界遺産の旧王宮(大谷さん提供)

 

遅れてやってきた「成長」 

 大谷さんの成長は、心理面と英語力だけに限らなかった。「東大では人に頼ってばかりいて、主体的には取り組まなかった」という学業も、イギリスでは「全部自分でやらなきゃ、という覚悟をもって勉強した」。留学当時はあまり成長を実感できなかったが、帰国して経済の授業を受けるうちに「より高い視座で俯瞰できるようになっている」ことに気付いた。留学前にバラバラに見えていた知識も「点と点がつながるように理解できるようになり、授業が楽しくなった」という。

 最後に、留学全体を振り返ってもらうと大谷さんは「最初が辛かった分、あとは全部楽しかった」と充実の笑顔を見せた。現在は外資企業も視野に就職活動に励んでいるという。留学を経て大きく成長した大谷さんの更なる飛躍が楽しみだ。

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「イギリスの食事はまずいと思わなかった」という大谷さんは、よくパブで食事をとっていたという=マッシュポテトとパイ料理(大谷さん提供)